丹後の国のすばる星
たすけて皇子さま!
 大きな一本松が村の高台にあって、あずみはそこに立った。
「皇子さま、いたら返事して」
 あずみは松の梢に羽根を休める白さぎのいることを知っていたので声をかけた。
「おう、いるいる。どうしたんじゃ。珍しいなオレを呼ぶなんて」
 吉備津彦は鳥から人間に姿を変えてあずみの前へ降り立った。
「ゆうべ、亀比売さまの夢を見たわ」
「なに、それで」
「島子さんを助けてほしい、皇子と力をあわせて守ってほしいって。それと、島子さんが温羅であるという疑念を晴らしてほしい、そうすれば助かりますって」 
「なるほど、単純でいい。しかし事実を歪曲して伝えるのが朝廷だ。うまくいくもんかね」
 吉備津彦は頭をかいた。
「そこをなんとか、お願いよ。島子さんは私のパートナーだから」
「なんだ、そのぱあなんとかって」
「大切な人って意味よ。ねえ皇子。お願いだから」
「オレよりも弓矢に考えがあるらしいんだ。聞いても答えちゃくれないがね。まあ、何とかしてみる」
 
 吉備津彦は拍手を打つと、鳥に化け、大空高く飛び立った。
  
 
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