《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』

久しぶりの合コン会場に向かいながらも私の腕に手を置いて隣を歩く万里に、まんまとはめられた感じがしてしょうがない。


まず、女子のメンツが問題だった。

うちの会社が誇る美人受付嬢の二人と、私と万里、そして私と同じ総務課の新人。合計5人だ。相変わらず幅広い人脈を持つ万里には恐れ入る。

みんな私より年下である。受付嬢をやるくらいだから顔もスタイルもいけている二人が参加する合コンに私ごときが混ざる。それだけでも鳥肌ものだ。

万里も女子力の高い可愛い系だし、新人は……顔こそ普通だが、社会に出てからまだ約一年足らずのピチピチ、とにかく若い。若いって事は、それだけで素晴らしい。

従って私だけが浮くほどに年上なんだけど! 

「ねえ、万里」

「はい、先輩なんですかあ?」

「私だけ大丈夫なのかなあ?」


予定していた女子が急に来られなくなったから、急遽誘われた合コン。

先にメンツを聞いてから返事するべきだった。まさに、後悔先に立たずの気分だ。

「ねえ、これなくなった人って誰?」
今更そんな事が気になる私も私だ。


「えっと、営業事務の明日香(あすか)ちゃんですよ。風邪なんですって。かわいそうですよねえ」
頭の先からつま先にかけてぞくぞくと悪寒が走った。


営業事務の明日香ちゃんといえば、うちの会社では評判の美人さんだ。好き嫌いの好みが別れる日本人離れした濃い顔だが、少なくても私は認めている。

明日香ちゃんは間違いなくそのへんのタレントなんかより遥かに美人だ。

何故、万里は明日香ちゃんの代わりに私を選んだのだろう。頭がどうかしているんじゃないだろうか? 

適材適所がなんたるかを把握できていない能天気な万里に言ってやりたくなった。
今夜は美人との合コンだと期待している男性が私を見たときのガッカリ具合を想像してごらんよ。

風邪の明日香ちゃんより断然かわいそうなのは私の方だからと。


なんか……始まる前から最悪なんだけど。


合コン会場である和風居酒屋の奥に入り、店員に案内されて個室の襖の前に立つ。大きな磨き上げた革靴がズラッと並んでいた。


やっぱり、帰ってもいいですか? 

そんな私の考えもつゆほども知らず、ノックして「失礼しまーす」と襖を大きく開けてしまう店員さん。

目の前に並ぶ男子を見て卒倒しなかった自分を私は褒めてやりたい、そんな気分だった。
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