わたしは彼を殺した、そして彼に殺される〜50years later〜
そのトラウマのせいか、

ここに来ても彼にとって周りの存在は、

すべて恐怖にすぎなかった。

自分が死んでるなんて、わかってない。

現世のときの続きが記憶にあるだけ…


おれは腰を下ろし、彼の視線に目を合わせた。

涙の奥にある、弱々しい目。

すがるような眼差し。

そのとき…

おれは彼女のことを思い出して、

「おれは、お前の味方だ」

そう言って、彼の震える小さな体を持ち上げて、部屋に連れていった。

おれが彼の担当となり…

すぐにでも天国に行くように諭した。

「天国にはお母さんがいるんだ。会えるんだぞ」

と教えてやったが彼はニコリともせず、

「お母さんが好きなのは、あいつだけ。
ぼくは邪魔だった」

ぼそっと応えた。
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