おっかけ!


榊原が寝ているベッドの隣もカーテンがしめられている。

先生が寝ているのかな?

そう思い、私は隣のベッドのカーテンを少しあけました。

えっ?ホントに??

私は、目を疑いました。なんども目を開けたり閉じたり、こすったり。
目をしっかりあけてみても、さっきと同じ光景。

『千っ…千晶くん…』

あの中庭でみた人は、本当に吉良千晶だったんだ。本当にこの学校に通ってるんだ。
やっと信じれた。

私の顔は、自然と笑っていました。というか、にやけていました。



『ゴホッゴホッ…。』

あっ…

榊原のベッドのカーテンをあけてベッドの横においてあるイスにすわりました。

『榊原くん…大丈夫?』

『大丈夫…。ゴホッ…』

榊原は、上半身をおこそうとして咳き込みます。


あんまり、動かないで。病状が、悪化しちゃうから。

『大丈夫なんだよね?じゃあ私は、授業受けてくるから。』

『ゴホッ…ゴホッ…やっぱしんどい…』

私がイスに座ると咳をしなくなりました。
すごく居心地がよさそうです。
榊原が私の手をとり、頬にくっつけました。

まだ熱いよ

そうあらわしてるのかな?

あっ…タオルがかわいてきている。とりかえなくちゃ


榊原の頬にくっつけていた手を自分のほうにむけ、たちあがり、タオルを水のなかにつけました。


ゴホッゴホッゴホッゴホッ

なんども聞こえます。水につけておいたタオルを急いでしぼり、ベッドへ向かいました。

『今日は、ゆっくり休むんだよ。』

『うんっ…ゴホッ…』

『ホントに大丈夫??』

『うん!だって、小春ちゃんが僕のそばにいるんだもん。』


私なんかがそばにいて、大丈夫になるの…?
そんなの初めていわれた…
だから…うれしい…


榊原は、私の手を枕と自分の頬の間にいれました。


でもね、今日は、もっと嬉しいことがあった。
間近で大好きな吉良くんをみれたから。


ゴホッ…

榊原くん…



榊原は、咳をしていながら寝ていた。

眠った…ということは、チャンス!

チャンス到来です。


おこしては、いけないと思い、榊原との手は、うごかさないようにしました。

右手はつかえないので、左手で隣のカーテンを開けました。

ドンっ!

目をあけると私は、誰かの腕のなかにいました。上をみると千晶くんが…??


『えっえっ…??うっそ…千晶くん…。』

うわっ…

いきなりまわりが真っ暗になりました。

やっぱり吉良千晶は、この学校に存在しないのですか?

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