K・K・K
出会い
朝食のトーストは味気なかった。
パンの耳はかたいし、
バターしか塗るものがなかった。

インスタントのコーヒーを自分で入れて、砂糖を控えめに入れた。

(やっぱり六つ切りパンの方がおいしい。)

そう思いながら、香はバッグを左肩にかけて、ローハーを履いた。

(あ、ハイソ、右左逆だ~。)
よく見ると校章が内側にきている。

さっき履いたばかりのハイソをじっと見ながら、少し考えたが、

(ま、いいか。)

と、結局戸締りをして、バッグを右肩に持ち替えて出かけた。

香の家から高校までは、最寄りの駅から数えて8つ目の駅で降りて、
指定のバスに乗らなければならない。

毎朝、7時20分には家を出て、
近くのコンビニで80mlの紙パックのコーヒー牛乳を買い、
飲みながら電車に乗るのが香の日課だ。

今朝は玄関でローハーを履いた時が7時20分だから、
ハイソを直す時間なんて、香には残されていなかった。


香は毎朝8時半には高校に着く。
授業は9時からなので、余裕で間に合う時刻だ。
登校してから8時50分のホームルームまでの時間は、
屋上に行き、i-Potで耳を塞ぎながら過ごした。



しかし、今朝はそうもいかなかった。
家から駅までの道のりの間、


ずっとハイソが気になって仕様がなかった。

(予定通りに。)

心の中で、そう思ったが、

・・・ハイソを履き替えたい衝動を止める事はできなかった。

駅に着くとすぐに公衆トイレに直行し、
念願のハイソを交換してしまったのだ。



その為、いつも乗っている電車に乗り遅れ、
結果次の電車に乗る事になってしまった。


(不覚。)


香は電車の中で、いつものコーヒー牛乳を飲まずに、
ボーっと手すりに手をかけて立っていた。



いつもなら、飲み干していたであろうコーヒー牛乳も、
今朝はまだ8分目くらい残ってしまっていた。

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