K・K・K
再会
ピピピピッ ピピピピッ

携帯のアラームがけたたましく鳴った。
枕もとにある携帯を手にとって見ると、「スヌースを終了しますか?はいorいいえ。」
とあった。
時刻はもう7時半をまわっていた。


ガバッ!!!
(ヤバイ。)

香はかかっていた掛け布団を勢いよく蹴飛ばすと、スクッと立って、早歩きで洗面所に向かった。


(クマだ。)
鏡に移っているもう一人の自分の目の下に手をあてて、くすんだ部分をなぞった。


自分の顔とにらめっこしながら、歯を磨き、顔を洗い、髪をとかした。

母はもう仕事に行っているみたいで、ガランとしたリビングのテーブルの上に、読みかけの新聞が置いてあった。

部屋に戻ると、制服に着替えて、机に座り顔をつくった。
昨日持って帰ってきたままのカバンを持って部屋を出ようとしたが、一度立ち止まり振り返ると、机の上に並べられた香水の中から、一番気に入っているブルーの瓶に手を伸ばした。

シュッシュッ。

かずの香りが香の体を優しく包んだ。

その香りのおかげで、何となく今日も頑張れる気がした。


(行ってきます。)

誰もいない部屋に向かって、あいさつをすると、途中のコンビニにも寄らずにそのまま駅に向かった。
(電車に間に合わなくなちゃうよ。)


香は間一髪でその電車に乗る事ができた。

(いつも通りとはいかなかったな。)
満員電車の乗車口付近の手すりに手をかけて、長方形の窓から外を眺めた。

昨日はそのまま湘南で父と別れて、母と一緒に家路についた。
父は香の家からさほど遠くない場所に仮住まいを持っていた。
二人の関係が悪くなったのも、香は自分のせいだと感じていた。

(声が出ないから。)

香は車内の騒音に紛れて、小さく声を絞った。

「・・・・。」
香でさえ聞こえない擬音ににた声がかすかに出たが、誰も気づく事はなかった。

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