K・K・K
謎の男
香は、学校が終わるとすぐに、
ジャンポールバーに向かった。

この間マスターに渡した曲を練習したかったのだ。

バーが開くのはPM5:00。

それまでの間は、香は店のピアノを自由に弾くことができた。


最寄りの駅から、バーに向かう途中、あの公園の前にきた所で、
やっぱり今日も数人の高校生が集まってるのが見えた。

制服もバラバラ、年齢もバラバラのその集団は、
満開の桜のなかで異様に見えた。

(この前は高校生だけだったなぁ。)

香はフと思った。



その集団の中心に長身の男が立っていた。

(あの男だ。)


香はすばやく視線をそらすと、小走りにバーへ向かった。


(あの人たち、何の集まりなんだろう?)

(でもこの間聴いた音色は、すごくキレイだったな。)


(etc・・・・。)


カランカラン。


バーの扉を開けると、マスターがテーブルの上に乗せてあった椅子をおろしている最中だった。


「香ちゃん、早いね!」
マスターは屈託のない笑顔で香を迎えた。

「そう言えばね、この間きていたお客さんが香ちゃんのこと聞いてたよ。香ちゃんのピアノ、気に入ったみたいでね、今度また聴きにくるってさ。」


マスターの言葉はうれしい。
素直に聞くことができる。
マスターもギターを弾かせたら、超一流なのに、
こんな小娘のピアノを良いと言ってくれる。
まだ、ミスをしたり、未完成な香のピアノを、温かい目で見ていてくれる。

香はマスターに父親を重ねていた。


(そう言えば、お父さんもこんな人だったな。)











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