ライラックをあなたに…


ダイニングに着いた彼女に温めたスープを出すと、


「何から何まで、至れり尽くせりね」

「そ、そう?」


彼女の言葉に呆けてみたが、俺の気持ちなんてバレバレもいい所だ。


「では、遠慮なく。………戴きます」

「………どうぞ」


彼女はそれ以上、何を言うでもなく、食事に手をつけた。


そんな彼女を眺め、ため息が零れそうになる。

気を遣うなら遣うで、悟られないように徹底しないと……。


それ程に彼女は今、精神的にギリギリの所にいる筈だから。



「このスープ美味しいね」

「ベランダで作った野菜が入ってるよ」

「えっ?……どれ?」


寿々さんは興味津々に器を覗き込んでいる。


「さぁ、どれだろうね?」

「えぇ~?!う~ん……じゃが芋?かぶ?……あっ、この葉っぱみたいなやつ?」

「正~解。葉っぱみたいじゃなくて、プチヴェールっていう名前の野菜だよ」

「プチヴェール?」

「そう。芽キャベツとケールの娘」

「えっ?!……娘??」

「ほんのりとした上品な甘さがあるでしょ?」

「言われてみれば……そんな感じが……」

「プッ……。無理に合わせなくていいから」

「いや、無理とかじゃなくて……夢中で食べちゃって、あまりよく味わってなかったよ……ごめんね」

「ううん、食欲があるなら構わないよ。気にしないで食べて……」


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