ライラックをあなたに…


「ごめんね。私、暫くは恋愛とかそういうのは……ちょっと控えたい」

「…………うん、だよね。それは分かってるんだけど……」


一颯くんは切なそうな声音を漏らした。


「このまま、寿々さんと別れたくない」

「…………そんな事、言われても……」

「寿々さんが俺の事、『男』として見てないのは分かってる。3つも年下だし、あの人よりきっと頼りないだろうし」

「………そんな事ないよ。一颯くんは私よりしっかりしてるし、その……ちゃんと、お、男の人だって認識はあるから」

「えっ?……マジで?」

「うっ、うん……」



口にしてしまったと思ったけど、もう遅い。

彼の瞳に再び怪しげな光が宿った気がする。


恐る恐る彼の表情を窺うと、薄い唇が僅かに上がった。



「じゃあさ、実家に帰るの………もう少しだけ待ってよ」

「えっ?」

「寿々さんがまた『恋』をしたいって思えるように、俺、全力で癒すから!」

「ッ?!………ちょっと、一颯くん?」

「ね?決まり!!」

「えっえぇ~っ?!」


困惑する私にちょっと意地悪な笑みを向ける彼。

『癒す』と言われても困るよ。


漸く気持ちを切り替えて、暫くは資格取得に専念しようと思ってたのに。


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