ライラックをあなたに…


「あの……」

「ん?」

「南雲さんって、………野菜嫌いですか?」

「え?………あぁ~、これ?」

「あっ、はい」


彼は自分の手元に視線を落としてから私に視線を移した。



彼は食事の度に器用に野菜を皿の隅に寄せている。

アレルギーがあるとか、好き嫌いがあるとか……誰にでもある事だけど、彼は違った。

野菜全般、物凄く綺麗に弾き出している。


それも、饒舌に語りながら………至極自然に。

それは、普段からし慣れているという事を物語っていて……。


けれど、ナチュラルフードやハーブコーディネーターの資格を持つ私にしてみたら、到底理解しがたい状況で……。


皿の隅に盛られている野菜達。

彼らの行く末は廃棄処分。

それを思うと胸がチクッと痛む。


しかも、このお店。

入口のイーゼル看板にも書いてあったし、テーブル脇のメニューにも記載されてるけど、『オーガニック専門店』って書いてあるじゃない!!


オーガニックが売りなのに、チキンソテーが評判ですって?

笑わせるんじゃないわよ!!

そりゃあ、チキンソテーも美味しいかもしれないけど、私のお皿に盛りつけられた野菜達は、どれも新鮮で美味しいわよ!!


私は完全に敵意剥き出しになっていた。


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