ライラックをあなたに…


甘い余韻を残しゆっくりと腕が解かれると、自然と絡むお互いの視線。


これだ。

この瞳だ。


優しく穏やかで温かい、この瞳。

この瞳に私を捕らえて欲しくて、何度も脳裏に思い浮かべていた。



無言のまま見つめ合う視線は、誰が見ても恋人同士のように見えるだろう。

それほどまでに熱く見つめ合っている。


すると、そんな彼がパッと視線を逸らし、頬を綻ばせながら。


「やっばッ、………寿々さん、マジで勘弁してよ」

「へ?」

「可愛すぎるんだけど」

「ッ!!」


顏を背けて照れる一颯くん。

だけど、それ以上に私の方が照れている。


好きな人に『可愛い』なんて言われたら、誰だって嬉しいに決まってる。

しかも、3つも年下の彼に。


お互いに視線を外しても、尚甘い空気が漂う中。


「そう言えば、小池教授は?」

「えっ?聞く事、そっち?!」

「へ?」


私の質問に彼が質問で返して来た。

私、聞く事……間違えたの?

小首を傾げ、彼の顔を見上げると、


< 323 / 332 >

この作品をシェア

pagetop