贖銅(ぞくどう)の刑
千歳と実
所で、この千歳と実の二人の出会いは、今から一年前、梅雨の季節であった。


「…お、おいお前!何やろうとしてんだ!止めろ!!」

間一髪、公園で木にロープをかけて首を吊ろうとしていた千歳を、通りかかった実が止めに入ったのが縁だった。

「…お前いくつだよ?まだ死ぬ様な歳じゃねえだろ!?

どうしたんだ?」

「…私、呪われているのよ!生まれてきてはいけない子だったのよ!

見てよ!この左目側の、私の顔!」

そう言って千歳は、左目側に髪を長く垂らして隠していた、その顔を実に見せつけた。

あっ、と声を思わず上げた実は、正直、見てはいけない物を見てしまったと思った。

千歳の左目から左頬にかけてあったもの。

それは中途半端に溶けて固まってしまった肉の塊。思わず目を背けたくなるような、ひどい火傷のあとだった。

「私は、小さい時に負った火傷が元で、ひどいいじめ…ううん、迫害を受けているのよ…」

所で、この千歳が住むN県B市は、過去十年おきぐらいに、忌まわしい事件が起きていた地域であった。
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