氷点下のテルミドール
しばらくすると
視線に気が付いた拓也が
部屋から出てきた。

「久しぶり」
「あぁ。まさかアイツと結婚するとは思わなかったよ」
「そう…」

元々、型にはまらない奴だったから
特に気まずい空気も流れない。
そんな自由奔放な姿、
その顔、声、仕草に惹かれたが
幼かった私は長く続かなかった。

ポツリポツリと交わす言葉に
これから私が言う言葉に彼はどんな反応を見せるのか
だけど、彼はきっと受け入れてくれる
そう信じてトーンを少し低くして言った

「…お願いがある」
明らかに空気が変わったが
彼は何の戸惑いもなく、
「加奈と俺との関係か?」
「違う」
即答する私を怪訝そうに顔を覗かせる拓也に
腕を伸ばし身体に絡みつく
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