。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「いや……そんなこと考えてねぇし」
慌てて言ってオレンジジュースを一口。
冷たいジュースを口に入れて、ほんの少しだけ緊張が緩まった。
「ちょ…ちょっとは考えてたけど。
戒は悪くねぇし…」
どんな形であるにせよ、婚約者が居ながら横から奪ったのはあたしだ。
母親だったら納得いかねぇよ。
「誰も悪くないですよ。
それに鞠菜かて彼氏おるし。戒さんより優しい言うてましたよ?」
アイスコーヒーに口を付けながらキョウスケが眉を下げて寂しそうに笑う。
「俺より優しいってどない意味や」
戒が冗談ぽく口を尖らせ、
こんなときまで気を使ってくれる二人に思わず笑みがこぼれた。
そうだよ、不安なのはあたしだけじゃない。
「お、お手洗い行って来る!」
あたしはメンタルを立て直すため、立ち上がったが
「ブッ!」
誰かにぶつかり思い切り鼻を打った。
いてて…
「失礼、お嬢さん。お怪我は?」
前にも聞いた台詞とシチュエーションに鼻を押さえながら顔を上げると
昨日あったイケメンジェントルがにこにこ。
「おやっさん!」
戒が顔を輝かせて腰を上げ、
「戒さん!いやぁしばらく見んうちに大きいならはって」そのイケメンジェントルの表情もぱっと華やいだ。
「俺の親父ですよ」
や、やっぱそうだったか…
「親父は戒さんが大好き。実の息子の俺より可愛がってるんですよ」
ボソっ
キョウスケがあたしに耳打ちしてくれて
「響輔、お前はあんまり変らへんなぁ。それより早よぉ、このお嬢はん紹介してくれ」
キョウスケパパはきらきら笑顔であたしを見つめてきて、
その輝かしいイケメンビームにあたしは
くらり
めまいを覚えた。