。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。


一人で拗ねていると、唐突に響輔が切り出し、俺は一瞬ホントに何のことか分からなかった。


「は?」


「だからキリさんの腰のタトゥーですよ。俺たちの背負っている紋にはそれぞれ意味がある。


その多くが組や力の象徴ですが、


仲間のシルシや特別な存在を意味するもの。



それと同じ意味で白へび、もしくはスネークも意味のあるタトゥーを彫っていたら?


絵柄を見たら何か分かるかもしれないですよ」


まぁ確かに言ってる意味は分かるけどな。


朔羅の胸の昇り龍だって黄龍のシルシであるわけだし。


同時に特別な存在で、その絶対的地位の力と存在を誇示するものでもある。


だとしたら変態タイガの腕に彫られていた陰陽のタトゥーにも何か意味があるんじゃねぇのか??


分かんね。


一体どこまで掘り下げて見ればいいのか。全然関係ないことかもしんねぇしな。


俺が真面目に考えてるってのに響輔はゆっくりとテーブルの上に肘を付き、手を組んでやや上から見下ろすように俺を見てきた。


なぁんか嫌な予感…


「確かめるってどうやって?


お前さっき自分で言ったじゃん。際どいところって」


「それは戒さんの力量次第ですよ。得意でしょう?色仕掛け」


やっぱそうなるんか。


「ダメダメ!俺には愛する嫁、朔羅が居るからな!お断りだぜ!!


あいつを泣かせたくない」


俺は真面目な顔を作って手を広げた。


「戒さんにその気がなければ、タトゥーだけ確認して帰ればいいじゃないですか」


「お前っ!!簡単に言うなよ」


俺の声が思わずひっくり返った。


ズイ


と身を乗り出して真剣に響輔を睨む。


「“あの”キリさん相手に無事帰ってこれると思うか?」


言ってる意味が分からないのか響輔は目をぱちぱち。


やがて数秒後に理解したのか目を細めて


「ああ、戒さんの好みですもんね」と白けた表情。


「そうだ!誘惑される!頭からバリバリ食われて骨の髄まで味わってからゴミみたいにぽいって捨てるんだ」


「あなたの想像力…と言うか妄想力?それで小説一本書けそうですね」


響輔は益々呆れたように言って頬杖をつきながら、あさっての方を見ている。


何だよ、俺は真剣になぁ…


考えてピンと閃いた。


「じゃ、お前が行けよ。お前なら大丈夫だ!俺が保障する」


「はぁ?俺こそキリさんと親しくないですし怪しまれますよ。ちゃんと喋ったことすらないのに。


それに保障って……」


響輔は心底イヤそうに表情を歪め


「お前は“あの”イチと一晩ベッドの中にいたって言うのに、何もせず帰ってきた。


マジで尊敬だぜ。お前ならできるはずだ!」


俺が力説したって言うのに


「イヤや。もうあんな生き地獄は二度と味わいたないです」


響輔、即答。


生き地獄…てことは、こいつもこいつなりに闘っていたってワケか。


響輔も男だな~






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