。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。



その後、あたしはキョウスケが何を言っても上の空で眠るまで始終ぼんやりとしていた。


出された夕食は、病院食ではなくちゃんとした松花堂弁当だったのに


ちっとも味が分からない。


これじゃ病院食とさほど変わらないな。


結局豪華な食事をほとんど残し、残った食事をキョウスケに食べてもらった。


何せあたしが食事を残すことなんて珍しいことだからな。


このあたしの異常な(大げさだって)状態にキョウスケが心配してナースコール…もといドクターコールでドクターを呼び寄せたが、ぼんやりしているのは点滴のせいだ、とドクターは説明した。


けれどはっきりと「違う」と言い切れる。


だがそう言えないのは





あたしが認めたくないからだ。





あの優しいキリさんが……お姉さんみたいなキリさんが


いつだってあたしの味方でいてくれたキリさんが






白へびだったなんて




嘘だよ。


絶対何かの偶然だって。


あたしの記憶ですら曖昧だ。だから雑誌か何かで見た情報を取り違えてるんだ―――


そう思うしかなかった。


ただぼんやりしているあたしに、ドクターはDVDを貸してくれた。キョウスケと二人じゃ間がもたないだろうし、何かリラックスできるものがあればいいと考えたようだ。


ディズニー映画だった。


それもあたしの大好きなシンデレラ。


変態め。映画のチョイスだけはいいな。


―――きれいなお姫様シンデレラは―――ガラスの靴を舞踏会で落としてしまう。




キリさんにガラスの靴をあげたのは―――


キリさんの王子さまなんですか?




その王子さまは一体誰なんだろう。





『ジミー・チュウのパンプスで罪滅ぼしのつもり?


あなたはやっぱり……あなたね』



夢で見た―――あの声はキリさんじゃなかった……ように思える。


所詮夢だしな。はっきりした何かなんてどこにも存在しないが。


『違うよ。


そんなつもりじゃない』


跪いてパンプスを差し出していたのは





タイガだった。







『守りたかっただけだ。




ただ―――君たちを……』











君‟たち”を―――



タイガには守らなきゃならない人が少なくとも



二人は居るんだ―――



タイガはキリさんの王子さまなんだろうか――――?









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