。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。



「でも…


まぁ忘れてくれないと我々の関係は成立しないな。


何だか矛盾してる」


玄蛇はちょっと苛立ったように前髪をぐしゃりと掻き揚げて


「王子様についててあげたまえ。


私はこれで退散するとしよう」


玄蛇はスーツの上着をひっつかみ、乱暴に肩に掛けた。


「ねぇ……ちょっと!」


と何か声を掛けると


「動きがあったらまた連絡する」


とそっけなく言いあたしの問いかけを遮り、玄蛇は部屋を出て行ってしまった。


あとに残されたあたしと、眠ったままの響輔―――






―――――


――



響輔は一晩は目を覚まさないだろう、と玄蛇は言った。


その言葉の通り、響輔は寝返り一つ打たずに昏々と眠り続けている。


玄蛇はここまでたどり着いたのは奇跡だって言った。


「まったく……無理しちゃって…」


ベッドの端に手をついて響輔の寝顔を眺め、彼の青白い頬をちょっと指先でつついてみると


それまで全然何をしても無反応だったのに、僅かに瞼を震わせて






「いちゆ…………」







小さく呟いた。










< 786 / 841 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop