抹茶モンブラン
道路が比較的空いていたから、車のスピードはどんどん速くなる。
両サイドに流れる景色は早すぎて、めまいがしてくる。
極度の緊張感の中にある時、私はこんなふうに三半規管がおかしくなる。
私はカバンに入れてあった安定剤をこっそり手にして見つからないようにそれを口に運んだ。

このスピードで、いったいどこまで行く気なんだろうか。

「…………あの、どこまで行くんですか」

背もたれにはり付いた状態で、私は恐る恐るそう聞いた。

「海ほたる」

堤さんは普通にそう言った。
ここは東京だ。
千葉の木更津に続くアクアラインを渡るまでは、相当な距離があるはず。

「え。そんな遠くまで行くんですか?」

食事だって言ったのに、何でアクアラインまで乗って海ほたるへ!?
仕事を離れた彼は、私の上司っていうより本当に普通の男性になっていた。
助手席に座っている自分は、彼の特別なのかなという錯覚を覚える。

「車って助手席に乗ったら最後だよ。どこに連れて行かれても抵抗できないし」

堤さんは、今まで見た事の無いようなうつろな目で真正面を向いたままそう言った。

「え?」

この人……大丈夫なのかしら。
もしかして、気軽に車に乗ったのは軽率だったのかな。
前回堤さんの車に乗せてもらった時とは条件が違うという事に気付いて、急激に不安になっていった。
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