抹茶モンブラン
「きりが無いから……行くね」

 何度目かのキスの後、私は思いきって彼の腕の中から体を離した。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

 バタンと助手席のドアが閉まって、車は静かにユーターンする。
 光一さんが乗った車のバックライトを見ながら、その明かりが見えなくなるまで私は道端に立ち尽くしていた。

 私の幸せがスルンと腕をすりぬけて、目に見えない場所へ隠れてしまったような気がした。

 毎日一緒にいたい。
 ずっと彼の手を握っていたい。

 こんな不可能な事を、私は別れ際になると強く思うようになっていて。
 その心を抑えるのがすごくつらくなってきていた。
< 85 / 234 >

この作品をシェア

pagetop