理想の男~Magic of Love~
「――うぇっ…」

思い出したと言うように、また私の目から涙があふれた。

忘れようとすればするほど、苦しい。

忘れようとすればするほど、痛い。

どうして、藤のことを忘れることができないんだろう?

蜘蛛の巣に絡まった蝶みたいだ。

もがけばもがくほど、蜘蛛の糸はさらに躰に絡まる。

絡まった蜘蛛の糸は、私を離さない。

絡まった蜘蛛の糸は、私を離してくれない。

そして、忘れさせてくれない。

「――ヤだ…」

今すぐにでも、藤を記憶から消したいのに…!
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