理想の男~Magic of Love~

「――愛莉…」

3年前の夏のことだった。

いつものようにバイト先の喫茶店に入って、着替えを終えて、キッチンに出た時だった。

「藤くん、ちょっとお願いがあるんだけど」

流しで手を洗い終えた俺に、マダムが声をかけてきた。

「何ですか?」

水道の蛇口をひねって止めると、俺は聞いた。

マダムは少し言いにくそうに口を開いて、
「コーヒー配達の細川くんが事故で足を骨折して、治るまで入院することになっちゃったの。

藤くん、確かバイクの免許持ってたでしょう?」

「ええ、持ってます」

俺は答えた。

バイクの免許はもしものためと思って、高校3年の終わりに取得していた。

「細川くんが戻ってくるまで代わりに配達に行ってくれないかな?

バイト代、少し増やすから」

マダムの話に、
「いいですよ、わかりました」

俺は2つ返事で引き受けた。
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