理想の男~Magic of Love~
「舞台?」

日常では使われない単語を聞き返した私に、
「藤さん、人を連れてきましたー」

ぱっつん前髪の女が奥の方に向かって大きな声で言った。

うわっ、すごい声だな。

外にまで聞こえているんじゃないかと思った。

よく鍛えられているんだな。

――えっ…?

そこに、彼がいることに気づいた。

あの子が呼んだ“藤さん”って、もしかして…?

いや、まさか。

もしかしたら、あだ名か何かかも知れない。

例えば、名前が“藤田”だから“藤さん”みたいなものだろう。

奥の方から、当人が現れた。

違う人で会って欲しいと、心の底から願った。

「――あっ…」

その人の姿に、私は目を伏せた。
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