【B】星のない夜 ~戻らない恋~



*

早く帰って来て……怜皇さん……。

*





彼を思いながら寂しい夜を過ごした。




翌日、起床して早々に出掛ける支度を終えると、
着替えを済ませて手配されたハイヤーに乗り込んで実家へと向かう。



流れる車窓をぼんやりと見つめながら
怜皇さんとの今の現実【時間】を思い返す。



もう私の人生から逃げ出したりしない。



こんなにも私は優しさに満たされているから。


今度こそ、きっちりと伝える。
『もう葵桜秋の身代わりは必要ないから』。



葵桜秋は怜皇さんが好きだから私を利用しただけ。


だけどお父様やお母さまなら、しっかりとわかってくださる。
歪んだこと、間違ったことが大嫌いなお二人だから。


携帯電話を取り出して、葵桜秋の電話番号を表示させる。
発信されるものの、葵桜秋は電話に出る気配がない。



今度はメールアドレスを表示させる。


そして……入れ替わる時間の終わりを告げるメールを送信した。




これで大丈夫……私は私として歩いていける。



葵桜秋との秘め事に決別をして私は実家の門を潜った。




チャイムを鳴らす。


暫くして姿を見せたお母さんは私の姿を見て、
「もう、何てことをしたの」っと私の腕を掴んで家の中へと連れ込んだ。


リビングに連れていかれた私が室内に入ると同時に
お父さんが思いっきり手のひらで頬をうつ。


パーンっと言う音だけが部屋の中に鳴り響いた。



勢いで吹っ飛ばされる体は床へと叩きつけられる。



打たれた頬を摩りながらお父さんを睨みつける私。



そんな私の傍、悪魔のような笑みを浮かべる葵桜秋。



お母さんが葵桜秋の携帯電話を手にして私の前に突き出す。



そこに表示されているのは、
秘め事の終わりを告げた先ほど送信したメール。




「もう恥ずかしくて、瑠璃垣様に申し訳がなくて
 どうしていいかわからないわ。

 瑠璃垣様は、お父さんの我が社にとっても親会社でしょ。
 亡きお祖父さまが大切にしてきた会社を助けてくださった恩人よ。
 
 こんな事実が公になったら、どうなるか気が付かなかったわけじゃないでしょ。

 子供の遊びじゃないのよ、咲空良」



ヒステリックに叫ぶお母さん。


全てがばれてしまったのだと自覚した。



だけど事態は、私が想像しなかった方向へと姿を変えていく。


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