【B】星のない夜 ~戻らない恋~
第二夜「瑠璃の封印」

1.名前が変わる日 -咲空良-


結婚式の招待状。
本当は参加したくなかったその式に出席するように仕向けたのは父。


実の双子の姉の結婚式を妹が祝福しないのは世間体が悪すぎる。


都城咲空良としての結婚式。


瑠璃垣の会社関係者や、都城の会社関係者も大勢集まる。


結婚式であって、ただの結婚式ではない
一大イベント。


それを祝福するのに、
どのピースが欠けても意味がないのだと説明された。



子供じゃない。
だからその意味も分かるよ。




だけど……都城咲空良はここに居るの。


あそこに居るのは都城葵桜秋だもの。
私じゃないわ。


そう叫ぶ私に、何度も言いくるめるように
『葵桜秋』の名を呼ぶ。



葵桜秋。



最初は楽しかった……ゲーム感覚だったその名前が、
今はこんなにも障害となって立ちはだかる。




あの日、突然の葵桜秋に寄って仕組まれたカミングアウト。


その日から、瑠璃垣の屋敷には帰れなくなった。

翌日から通おうと思っていた、瑠璃垣の本社への出勤も
体調不良からの退職と言う形で、見事に封じられてしまった。




怜皇さんから頂いた初めてのプレゼントである、
携帯電話も、あの日から葵桜秋が手にしている。



あの電話は咲空良のもので、
葵桜秋となる私が持っているのはおかしいから。



物が全てじゃない……わかっているけど、
怜皇さんと繋がっていた唯一の目に見えるアイテム。


それはもう、私の手元にはない。


瑠璃垣の家が用意してくれた洋服も、
咲空良として当たり前のように使っていた化粧品も……
全て私の手から消えてしまった。



泣き崩れるように、自宅の葵桜秋の部屋で
閉じこもったように時間をやり過ごす。


葵桜秋の妊娠に気がついたらしい何人かが、
自宅に、葵桜秋の携帯にと、次から次へと電話をかけてくる。
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