【B】星のない夜 ~戻らない恋~


「このプレゼントは、二つとも二人のものだよ。
 誰がどっちかなんて、最初から決める必要はない。

 君もそろそろ、伊吹と志穏の差別をやめたらどうだい?
 どちらも可愛い。

 君は違うのかい?」


そう告げる怜皇さまに何も言い返せなくて、
私はただ黙って俯く。



「坊ちゃま方、お父様からのプレゼント嬉しいですね。

 ほらほら、慌てなくていいですよ。
 知可子と開けましょうね」


そう言いながら、木下は包装紙を子供たちの前で少しずつ解いていく。


箱の中から出てた来たのは、どちらも歩行器。


最初の箱からは押し車的な歩行器。
そして次の箱からは、座り込む形の丸い歩行器が姿を見せる。


「おやおやっ、坊ちゃま方良かったですね」



そう言って木下は伊吹を抱き上げると丸い座り込む形の歩行器へと座らせる。



志穏は、そんな伊吹が座った歩行器の方へと近づいて
その近くに立っていた怜皇さまの足元にしがみつく。


そんな志穏を視線に入れて、私はすぐに抱き上げて
距離を取らせる。


だけど何度距離をとらせても志穏は懲りずにハイハイして
怜皇さまの足元へと戻って捕まりながらゆっくりと立ち上がろうとする。



「まぁまぁ、志穏坊ちゃま。
 もう少しで歩き出してしまいそうですわね。

 志穏坊ちゃまには、こちらの歩行器で」



木下は志穏の方には押し車的な歩行器を前にして手渡す。
 

そしてゆっくりと「志穏坊ちゃま。あんよはじょうず」っと
手拍子をしながら声をかけつづける。



そんな声に吸い寄せられるように、少しずつ押し車がカチャカチャと音を鳴らしながら
ゆっくりと動き始める。

それと同時に、木下の方へと歩行器を押しながら歩いていく志穏。




だけど歩行器に座らせた伊吹はその場所から動こうともしていないし、
動く気配も感じられなかった。





同じ時期に生まれたのに……。





志穏に出来て、伊吹に出来ないことが
少しずつ増えていくのが、見ていてたえられない。



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