【B】星のない夜 ~戻らない恋~


そんな私を葵桜秋は優しく抱きしめて、
いつもの魔法を唱えてくれる。


やっぱり咲空良は凄いよ。


昔からいつも困ってた私を助けてくれた。
そして今回も私の為に力を貸してくれてる。


瑠璃垣の家に馴染めない私。

怜皇さんと今だ、
まともに会話すら出来ない私。


私の弱みの全てを
葵桜秋は抱きしめてくれる。


『咲空良、
 泣かなくていいよ。
 
 咲空良には、
 私が居る。

 助けてあげるよ。
 私が……』



幼い時から何度も何度も
聞いた葵桜秋の魔法の言葉。


葵桜秋が助けてくれるなら……。




そう思うと、何もかもを忘れて葵桜秋の隣、
お客さん用の布団の中で安心したように眠れた。


翌朝、葵桜秋と共に家を出る。


一緒に家を出るけど途中は別々に行動をする。


ハイヤーを巻くことが出来ない私は、
葵桜秋が待ち合わせ場所に向かったのを確認して
車の中に乗り込んだ。


待ち合わせ場所は二人行きつけの美容院。


家は一緒に出たのに、
待ち合わせ場所までのわずかな距離を
別々に行動したのはこれからやろうとしていることに
多少の後ろめたさがあるから?


昔から何度も繰り返してきた
二人の特権。




ハイヤーを降りて人ごみに紛れて葵桜秋と合流。


合流した後は葵桜秋と二人馴染みの美容室へと立ち入る。



私が瑠璃垣に旅立って髪型を変えた葵桜秋。




私よりも髪が短くなった葵桜秋の長さに
私が切って合わせるような形で打合せ。




「咲空良さま、葵桜秋様共に
こちらの髪型はいかがでしょうか?」




昔からずっと担当してくれていたスタッフさんの
娘さんが、PCで合成映像を作りながら
スキャンして取り込んだ私たちの輪郭に
気になる髪型を合成していってくれる。


葵桜秋と過ごす久しぶりの時間は、
ちょっと心地よくて、楽しくて。


ドキドキする時間で、
二人で選んだ髪型に同じカラー。


明るすぎず、暗すぎず自然な感じで。


髪は少しシャギーを入れながら
絶対的に、ストレートの美しい髪を
全面的に押し出す感じで。


日の光を浴びると、上品に
光に反射して茶色に
見えるようなそんなレベルで。



隣同士、同時に並んで
仕上げて貰った同じ髪型。
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