【B】星のない夜 ~戻らない恋~

24.親友の子供 - 怜皇 -



結婚した後も、睦樹はマンションのあの部屋は解約しなかった。

心【しずか】さん公認で残したあのマンションの名目は、
書斎と言うことだったが、親友が俺自身の逃げ場所として残してくれていたのは
何よりだった。


心【しずか】さんの悪阻が酷く、
咲空良は何かとつけて、睦樹夫婦の元に行きたがった。



「怜皇、良かったら心【しずか】の傍に咲空良ちゃんを
 頼めないかな?

 アイツ、いつも俺に隠そうとして無理するから心配でさ。
 咲空良ちゃんだと、アイツが隠そうとしても見つけ出してくれそうだからさ」


そんな風に頼まれてしまっては、断る理由もない。



プロジェクトも大詰めになってきているし、
それと同時に進行しているもう一つの仕事も残すは最後の確認のみ。


この双方の仕事がおさまれば、ある程度、次期後継者としての手腕を
伝えることが出来るかもしれない。


それは俺自身の自信にも繋がってくるはずだから。


だけど仕事にのめりこめば飲めるこむほど、
自宅に帰れる割合は少なくなる。


それ故に、彼女には一人で邸に閉じ込めるよりは
息抜きになるだろうと、自由にさせることを承諾した。




約8か月間。

慌ただしいスケジュールの合間に、
彼女と逢うのは、殆ど外のホテルで……彼女が会いたいと連絡してきたのみだ。



ゆっくりと過ごすことのないまま時間が過ぎていく。



毎日の電話は欠かさないままも、
彼女が嬉しそうに話すのは、心【しずか】さんと睦樹のことばかり。


お腹の赤ちゃんが今日はどうだったとか、
心【しずか】ちゃんがどうだったとか……今日はどうやって過ごしたとか。


そんな会話を少し交わして電話を切る。





出産予定日は……3月だったか。




携帯に映し出される、今月のカレンダーに視線を向けて
アイツが父親になるのを存在する。




俺にとって『家族』とは何だろうか?




普通の家族がどんなものか、俺にはわからない。


ただ俺にとっての家族は一族でその一族の期待に答え続けることが、
家族であり続けるための唯一。


幸せを感じられるかと問われれば、
そう言ったものもわからない。



家族は何?
幸せは何?




正直、わからないことだらけだ。




2月も下旬に迫った頃、仕事中の俺に睦樹からのメールと咲空良からの着信が入った。


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