【B】星のない夜 ~戻らない恋~

25.親友の息子 - 咲空良 -


心【しずか】の結婚式。
ちょっぴり勇気を貰ったはずなのに私の恋は今も進展しない。



最初に蒔いたのは私。


自分の人生から逃げるために葵桜秋を利用した私。


そして今は……葵桜秋に振り回されてる。



私が怜皇さんと二人で出かけるタイミングを
積極的にセッティングさせようと連絡をしてくる。




「もうやめよう」




喉まで出かかる言葉は今も最後まで伝えきることは出来ない。



葵桜秋から連絡が来るままに相変わらず忙しく飛び回ってる
怜皇さんの貴重な帰宅の日をクリスタルホテルに呼び出す。



家の中ばかりじゃなくて外に出掛けたいから。




ホテルについてすぐ、葵桜秋が言うままに入れ替わって、
閉塞された時間を葵桜秋が借りた部屋で過ごす惨めさ。



その惨めさが今まで私が葵桜秋にさせていた
痛みかも知れないと、少し今までの私を見つめなおす機会。



だけど……やっぱり悔しいよ。



こんなに傍に居ながら咲空良と葵桜秋。





私たち双子を、心【しずか】のように見極めてくれない、
怜皇さんに少しイライラしてる。



今更なのに……。





悶々とした思いを抱えながら、
葵桜秋が怜皇さんと過ごす一夜に
嫉妬する私の知らなかった私。




そんな自分に蓋をして私はいつものように、
翌朝、葵桜秋と入れ替わって瑠璃垣の屋敷へと帰った。



怜皇さんとようやく会える、
一夜は、そうして消えていった。



今日から怜皇さんは海外出張。



仕事なのだからと思いながらも
それだけでは抑えきれない悲しみもある。





そんな時、心【しずか】から一本の電話。




『咲空良、良かったら少し手伝ってくれない?

 咲空良の息抜きも兼ねて。
 睦樹からも怜皇さんには連絡して貰うから』




心【しずか】は何も言わないけど、
多分、私が秘め続ける心の葛藤を一番感じ取ってくれている
そんな気がする。



一人で孤独に閉じ込められそうになる私を
心【しずか】は私の負担にならないように
抜け出させてくれた。


全てを引き受けるような形で。


そんな親友の優しさに救われながら、
その後もずっと、瑠璃垣の屋敷と、
心【しずか】の自宅に通う日々が始まった。



睦樹さんの口添えもあったみたいで、
私が怜皇さんに、告げた時もあっさりと許可が下りた。



お腹が突き出すように
膨らみ始めた心【しずか】。





隣でお腹を慈しむように撫でる
心【しずか】の顔はもう母親の表情をしていて……。




そんな心【しずか】を羨ましいと感じる自分。
そして……心【しずか】の為に何かを尽くしたいと思う自分。


そして自らの壁を、
それにすり替えて逃げてしまいたいと望む私自身。

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