浮気は、いいよ。
「………夕食、作らなきゃ」
何も考えたくなくて。
別な事で自分を誤魔化したくて。
でも、誤魔化すなんて出来なくて。
まな板に涙が落ちる。
こんな時でさえ、『幸太郎の好きなビーフシチューを作ったら、またワタシを見てくれるかな』などと過ったりする。
泣きながら材料を切る。
「………今までで一番おいしく作ってやる」
切った材料を炒めて、煮込んで。
グツグツ揺れる具材を眺める。
「……………………たすけて」
料理で気なんか紛れるハズもなかった。