浮気は、いいよ。



優里が嫌いだったわけじゃない。



可愛くて、誰にでも優しくて、誰からも愛されて。



優里は『カットの練習台になる』と言って、長かった髪をなんの躊躇もなく切らせてくれる子だった。



『沙耶香の1番最初のお客さんはワタシだからね』と、ワタシがスタイリストに昇格した時に、自分の事の様に喜んでいた優里。



優里をワタシが働いている美容室に連れて来れば、男性スタッフはこぞって優里のカットをしたがったけれど『ワタシは沙耶香に絶対的信頼を置いているので、シャンプーをお願いします』と律義に断る子で。




そんな優里を嫌いなハズがなかった。



ただ、羨ましかった。




ただただ、羨ましかったんだ。




幸太郎を好きになったのは、ワタシの方が先だった。



ワタシの男トモダチに『イケメン紹介してやるから優里ちゃん紹介して』と言われたのが、幸太郎に出会ったきっかけだった。




そんな予感はしてた。




そのイケメンも、予想通り優里を好きになった。




そして予想通り、ワタシもそのイケメンを好きになった。
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