浮気は、いいよ。




「・・・・帰ろっか」




悠介がワタシに背中を向けて歩き出した。




黙って悠介の背中を見つめながら歩いた。




車に乗り込んでも2人共無言だった。




家の前まで送ってもらい、車を出ようとした時





「我慢できなかっただけ。 優里を離婚に不利にしたかったワケでも、幸太郎さんと同じだと思ったワケでもないから」





悠介がワタシの腕を掴んで言った。




「・・・・我慢って??」





「………優里は、オレが優里を好きだって言ったらどうする??」










心臓がバクバクした。





・・・・・ワタシは悠介が好きなのだろうか。




だったら幸太郎の事はもう好きじゃないの??





これこそ、全然分からない。




そんな頭の悪いワタシが発した言葉が







「・・・・ドキドキする」







馬鹿を包み隠さず丸出しにしてしまった。




『プッッ』




悠介がオナラの様な変な笑いをしたので、突っ込んでやろうと思ったが





「そっかー、そうだよな。 告白とかされっちゃたら誰だってドキドキするよな、フツー。 うん、優里は間違ってないよ。 てゆーか、正しいよ、うん」




一歩遅かった。




悠介に小馬鹿にされた。




今更悠介に変な笑いに突っ込んだところで負け惜しみに見えるだろうな。




てゆーか・・・・




「聞く相手間違ってるでしょ」




本当はワタシに聞きたいワケじゃないくせに。




「は??」




この期に及んでとぼける気なのか、悠介。




「ホントは沙耶香に聞きたいんでしょ??」




「ナンデ沙耶香??」




めんどくさいな、悠介。 ワタシはもう分かってるんだっつーの。




「沙耶香の事になると怒るし、ワタシが沙耶香に慰謝料請求するって言った時もビックリしてたし。 ホントは嫌だったんでしょ?? 沙耶香が訴えられるのは」



「どんだけ被害妄想。 つーか、どんだけソープオペラ」



悠介が鼻で笑った。



つーか、だから『昼ドラ』って言えっつーの。



「オレ、めんどくせーの超キライ。 だから、もっと単純で簡単なんだよ」



「⁇どーゆーコト⁇」



ぶっちゃけ、その言い方自体がカナリめんどくさい。



「優里が人妻じゃなくなったら教えてやるよ」



うーわー。



「悠介、超絶めんどくさい」



言い捨てて車を降りた。



「おやすみ、優里」




悠介は窓を開けて手を振ると、笑いながら去って行った。
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