それだけ ~先生が好き~



「おはよう。なんだぁ?元気ないな」



予鈴ギリギリで学校に着いた私。


教室に向かう先生に話しかけられた。




「・・・そんなことないです」



そんなこと言ったって無駄だけど。


先生はすぐ気づいちゃうから。




昨日、早速番号を交換した晴香が電話で言ってたよ。




『松戸先生は、いつも辛いとき話しかけてくれた。だからどんどん好きになっちゃったんだぁ』




嬉しそうな声に、涙をこらえた。


一生懸命平気を装った。



そのせいか、全く眠れず朝を迎えた。




「・・・何かあったのか?」



顔を覗き込む先生を見ていると泣きたくなる。


そんな心配そうな顔しないで。




私は大丈夫だから。


もう何も心配いらないから。




言いたいのに、声が出ない。




「先生、水野・・・晴香がね、先生優しいって言ってたよ」



やっと出た話題は、晴香のこと。



私は・・・本当に何を考えているんだろう。


自分でもあきれる。





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