† Lの呪縛 †
ネヴィルはまだ温もりのあるシャロンの体を抱きしめた。


ずっとそうして居たかったが、終わりの時間は近付いていた。


騒々しい足音が次第に大きくなっていく。


ネヴィルはシャロンの頬に口付けた。


穏やかに眠るシャロンの体は灰となり、舞い、姿を失った。


ネヴィルはオリヴィアを両手で大事に抱え、窓から外へ飛び出した。


大きく広がる漆黒の翼。


風を切り、物凄い速さで進んでいく。


だが濡れた頬は暫く乾くことはなかった。


やがて静寂の広がる湖に辿り着き、ネヴィルは翼をしまった。


指を鳴らすと何処からともなく棺が現れその中へ優しくオリヴィアを寝かせると、髪の毛をひと束掬い上げ、唇を寄せた。



「シャロン、すまない……」



ネヴィルはオリヴィアの顔を見つめ、呪文を唱えた。


そしてオリヴィアの額にキスをし、棺を閉めた。


手を上げると棺は持ち上がり、ゆっくりと湖の中心へと向かい、そして指を下げると棺も降り始め、静かに湖の底へと沈んでいった。


それを見届けたネヴィルは両手を合わせ、目を瞑った。


手の膨らみの中に現れたボヤけた光の玉を愛おしそうに見つめ口づけをすると、天に向かって手を広げた。



「契約違反をしてしまった……だから、お前の魂はもらえない。 来世では幸せになれる様、祈っているよ……」



魂が見えなくなっても、ネヴィルは空を見上げたまま暫くその場を動こうとはしなかった。





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