† Lの呪縛 †
男は静かに手を振るった。


男の手が止まると共に、勢いよく血が空中に飛び散った。



「ゔあぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ」

「っあなたッッッッッッ!!!!」



銃は絨毯の上に転げ落ちた。


フォスター子爵の両手を道連れにして……。


唸る様に悲痛な叫び声を漏らすフォスター子爵の切断された腕からは、止めどなく血が滴り落ちていく。


男は伸ばした鋭利な爪を短く納めながらため息を漏らした。



「人間がか弱く脆い生き物だという事をついつい忘れてしまう。 それでは死ぬのも時間の問題だな……。 まぁいい、多少時間は掛かるが自力で探すとしよう」



男と目があった子爵夫人は青ざめた顔をひきつらせた。


どんな時も髪の毛を整え、顔には化粧を施し、装飾品を身につけ着飾っているフォスター子爵夫人。


だが今は髪の毛は乱れ、ネグリジェは血に塗れ、化粧の施されていない顔は汗と涙と鼻水で見れたものではない。



「醜い」



男は再び空気を切る様に手を振るい、クルッと背を向けドアに向かって歩き始めた。


そして指先に着いた血を舌で舐めとりながら、振り返ることなく部屋を後にした。


フォスター子爵は絨毯の上に転がった妻の頭の横に崩れる様に倒れ込み、愛する妻の顔を見つめたまま苦しみから、痛みから解放された。






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