でも、振り向かないで…
もうすぐお別れ


「いやー、淋しくなるねー。」


課長はそう言いながら、後ろから私の肩を叩いた。


(嘘ばっかり。本当はそんなに関心ないくせに。)


私、北村翔子【きたむらしょうこ】は5年間働いたこの会社を本日退職する。


高校を卒業して就職したこの会社は、IT関連の決して大きくはない会社だった。


家庭の事情で高校卒業と同時に就職したが、やはり途中で「夢」を追いかけたくなった…と言えば聞こえはいいが、元々理数系の得意ではない私が、この会社で今後役に立つとは到底思えないほど、色々な事に自信を無くしてしまっていた。


(自分では割とポジティブだと思ってたんだけどな)


いざ退職となると、ネガティブな気持ちになる。


この課長は本当に淋しいと思っているのだろうか…。


仕事でミスをしたり、課長に私的な用事を頼まれその度に嫌な顔をした私に…。


こうやって周りを囲んでくれている仲間達は、いつまで私の事を覚えてくれているのだろうか…と。





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