天使の歌
キュティは今迄、村から出た事は無かった。
それ故、行く当ても無く、しかし帰る事も出来ず、彼女は村の周辺を歩き回っていた。
自分を追う者達が居る天界に留まるべきか。
迫害されると解っていて、人界へ行くべきか。
キュティは悩んでいた。
「……はぁ。」
小さく溜め息を ついて、キュティは膝を抱えた。
村を出てから ずっと身に付けているヘッドホン。
其処から聴こえて来る音楽に、想いを委ねる。
キュティは幼い頃から、音楽が好きだった。
(だって、これ聴いてると、何も聴こえないんだもん。)
自分を差別する他者の言葉を、彼女は ずっとヘッドホンで防いで来たのだ。