天使の歌

桜と樹がキュティを連れて、去って行った後。

セティは、地に倒れた。

目は開いている筈なのに、視界は真っ赤で――何も、見えなかった。

(……キュティ……。)

キュティの顔が、脳裏に浮かぶ。

楽しそうな顔。
嬉しそうな顔。
泣いている顔。
怒った顔。

短い間だったが、一緒に旅を して、彼女の事を沢山 知った。

全てが、愛おしくて堪らない。

漸く確かめた、お互いの気持ち。

数回のキス。

恋人らしい事なんて殆ど せずに、無我夢中に戦って、生きて来た。

キュティと過ごした日々ばかりが頭に浮かび、セティは微笑んだ。

(……キュティ……。)

もし。

もし、俺が生まれ変わって、
もう1度、君に会えたなら。

何度でも、君の気が済む迄
好きと囁いて。

ずっと ずっと、
君を抱き締めるよ。

だから、幸せでいて。

君は ずっと、笑っていて。

――大好きだよ――。

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