天使の歌
「……良い曲でしょ?私、音楽が好きなんだ。」
暫くして。
キュティが そう言うと、少年はヘッドホンを外しながら、怪訝そうな顔を した。
「……きょく……おんがく……?」
「えっ!?」
キュティは思わず声を上げる。
「まさか、知らないの?曲、音楽、メロディー、旋律、ヘッドホン!!」
慌てふためいて早口で言うと、少年は益々 意味が解らないと言う顔を する。
「しっ、知らないの!?」
「っ……悪かったな、世間知らずで!!」
むっとして少年が答える。
その表情が、何だか少し可愛らしくて、キュティは思わず、ぷっと吹き出してしまった。
「おい、笑うな!!」
「だって、さっきと あんまりにも違うから。」
さっき。
天使と戦っていた時、彼は冷たい瞳を細め、光を瞳に宿していなかった。
そんな彼が少し焦ったように話し掛けてくれている。
会って間もない人だけれど、彼と話す事で、キュティの心の傷が少し癒された気がした。