それはずっと近くに。
見上げる先に立つその人は、くわえタバコに、慎二が走り去った先を遠い目をして見つめていた。


「バカじゃねぇの。・・・・・・初対面ですみませんが」


一応謝ってはいるが、2度目はバカを思い切り強調して言ってきた。


「なんなんですかあなた・・・・・・」


「隣人です」


「・・・・・・関係ない人に言われたくないんですけど」



「そうですね」


そう言ってその隣人は部屋の中に入っていった。


なんなんだよ!倒れ込んでいるところをグリグリ踏みつけられたように、その場から立ち上がれない。



もう最低だよ!!!!!



「ほれ。まぁ飲め」


いつの間に戻って来ていたのか、隣人は缶ビールを目の前にヒラつかせた。


「私・・・・・・弱いんです」


「あ~だからリセットできないんだ!!ズル~と引きずりっぱなしなんだ。
酔って何もかも忘れてぶちまけるんだよ!これが一番!!!」


受け取らない缶ビールを私の前に置くと、隣人は先にブシュッとブルトップをあけてグビグビ飲み始めた。


「パァ~うめ!!ここの景色ってわりと綺麗だってこと知ってた?」


目の前には、公園の木々が生い茂り緑が広がっていた。


あまり気にしてみていなかった。


美味しそうに飲む横顔につられ私も缶ビールを手にしていた。


「いっいただきます・・・・・・」
< 2 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop