王に愛された女



 というのも、ガブリエルは本当に朝起きられないからだ。しかも、よく寝ないと疲労がなかなか抜けない。もし今以上に早起きしろと言われれば、疲労が抜けきらないだろう。

「どうしよ…」

 ガブリエルはそう呟いて歩く速度を速めた。

 川に着くと、前から洗濯の仕事をしているアイリーンが振り向いた。

「あなたがガブリエルちゃんね?今日からよろしく」

 ガブリエルは「よろしくお願いします」と頭を下げた。

「そんなに硬くなくていいのよ」

 アイリーンは、まだ二十代半ばくらいだろうか?長い藍色の髪を左側で一つにくくっている。目は大きくて、ガブリエルの憧れる美女像まさにそのものだった。

「あ、あの…仕事は?」

「あぁ、その籠に入ってる服を洗って、それで村の入口近くにある私の家まで運んでちょうだい」

 そもそも、この仕事を考えたのが彼女だったことをガブリエルは思い出した。だから服を持っていくのが彼女の家なのだろうと納得し、ガブリエルは川端にしゃがんだ。

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