王に愛された女




 無意識のうちに、足が動いていた。

「王妃様!?」

 アリシアの悲鳴に近い声が聞こえたが、ガブリエルは気にしなかった。

 ただ、部屋の中へ入って行った。

 そしてオラシオンとルークの間に立つと、ルークを見上げた。

「おや、神のお出ましだ」

 ルークが演技めいたセリフを吐き捨てる。

「もし、本当に私が神なら、私は神として王妃でいることをやめる」

 ガブリエルはゆっくりと言った。

 ルークの顔に戸惑いの色が浮かんだ。

「ガブリエル!?何言って…「私が決めたことなの!」

 オラシオンの言葉を遮ってガブリエルは叫んだ。

「私だって、本当はオラシオンの傍にいたい!!でも、神ならそれは許されないから…」

 涙がこぼれた。

「私は、神だから…。ここにいちゃいけないんだ…」

「オマエの正体が何であれ、俺はオマエのことを愛し続けるよ」

 オラシオンの言葉に、ガブリエルは涙を拭う手を止めた。

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