王に愛された女



 今日は一昨日よりも仕事が早く片付いた。

 ガブリエルは一日休んだ分、疲労が抜けて仕事が早く片付いたのだろうと思った。それから、まだ仕事をしているであろう兄フィオーレの仕事場へ向かう。

 フィオーレは昨日も夜遅くまでガブリエルの看病をしていて疲れているはずなのに、そんなブランクを感じさせないキビキビした動きで石を運んでいた。

「お兄ちゃんっ」

 ガブリエルが呼ぶと、フィオーレが歩くのをやめて振り向いた。

「おぉーいっ」

 手を振ってみる。

 フィオーレはさっきよりも速い足取りでガブリエルに近寄ってきた。

「具合はどうだ?」

「もう大丈夫。お兄ちゃんのおかげだよ」

 兄はにっこり笑い、曇った空を見上げた。

 ガブリエルも空を見上げた。

 昼間なのに、分厚い雲が立ち込める空は夕方のように薄暗い。

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