天使な小悪魔 気付いたが最後の恋の罠

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 どうしたらいい、との切実な問いかけに、和也はいよいよ頭が破裂しそうだった。

 止まぬ屋外からの喧騒が早鐘にかき消えて、耳鳴りさえした。

 たまりかね、やめてくれと頭の中で悲鳴を上げた次の瞬間、彼が選んだ行動は、
 ……思い返すだに自分を絞め殺したくなるほど、それはみっともないものだった。

 それこそ男気の欠片もない……。

 儚げに涙をこぼすか弱き天使を置き去りに、まとめて責任も投げ出して、半ば這々の体で和也はその場を逃げたのだった。



 ほとんど魂の抜けた状態で部活を終え、家に帰り、機械的に食事をすませて風呂に浸かり、ベッドに突っ伏してからは悶々と、されど無為な時間を過ごしている。


(明日からどんな顔して会えばいいんだよ……クソ……)


 せめて、せめて何か言えなかっただろうか。

 あんな醜態、どう考えても無しだろ……。格好悪すぎ。

 追い詰められて取った己の行動の情けなさ、幼稚さに泣けてくる。


(でもさぁ、相手あの橘だぜ……あの才色兼備な学年のマドンナが俺を、す、す、すす好きとか……っ、そんな、あ、ありえねぇっつか……)


 夢にも見なかったことだ。

 自分にそんな大層な、特等席みたいなポジションが用意されてるなんて考えもしない。

 卑屈になるわけではないけれど、彼女が自分を選ぶはずがないと思うことに何ら疑問も持たなかったし、

 ましてや虚しいとか哀しいとか悔しいなんて感情は欠片も彼の中を過ぎらなかった。


 今でも正直、夢でも見たような気分なのだ。
 狐につままれたみたいな―――



(いっそ夢だったらいいんだけど……)

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