星月夜のマーメイド
事実


夏休みが終わってしばらくすると、エレンの様子が何となくおかしいことに気が付いた。


笑っているが、どことなく上の空で。


話をしているが、別のところを見ている。



「光輝君何ボサッとしてんの?若いんだからシャキッとしなさいよ。」


ボーッと突っ立っていたため、中島に肩を叩かれてしまった。


「うわっ、急に叩かないで下さいよ。」


「最近やけにボケッとしてるけど何かあるの?」


(鋭い…さすが年の功、中島。)


「あーもしかして、光輝君恋しちゃってる?」


光輝の邪な心が手に取るようにわかるようだ。



「な・なんですか唐突に!」


こっちこっちと中島に手を引かれ、倉庫まで連れてこられてしまった。


「実はずっと気になってたんだけど、光輝君エレンちゃんばかり見てるからさ。」


鋭い眼光が眼鏡の奥でキラリと輝いた。


しかし中島から放たれた言葉は、光輝を奈落の底へと突き落す。









「エレンちゃんはダメよ。彼女主婦だから。」







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