星月夜のマーメイド
幸せの形




「起立、礼」


「先生、さよーならー」


元気に手を振る生徒に、光輝は笑顔で応えた。


「気をつけて帰れよー!」



今日は終業式。


明日からは夏休みだ。



大学を無事に卒業した光輝は、念願の中学教師になった。


専科は国語一般。


最初の年なので、副担任からのスタート。


担任の先生は学年主任のベテランのおっちゃん(もとい、立派なセンセー。)




「 相田先生、『先生』が板についてきたじゃない。」


「いやいや、まだ全然慣れないですよ。」


お世辞だとは思うが、くすぐったいような嬉しいような気持ち。


東京での5年間で少し都会っぽくなった光輝だが、この長閑な場所で過ごすうちに、元々持っていたゆったりした感覚をすぐに思い出していた。


両親からは、都会の大学に行ったのにわざわざ田舎の教師になることはなかったのに…と、相変わらずグチグチ言われたが。


結局何をやるにも言いたいんだなと、今では気にしなくなった自分にビックリする。


 
光輝が選んだこの土地。






マーメイドが住むラグーン。





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