トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐



反動で鳥肌の立った腕を擦っていると。




「んな嫌そうな顔で言われてもな……」




「しょうがないでしょ、告白なんて、初めてなんだから」




「………本音は?」




「………………告白処女を奪われるなんて、心外だなー、と」




「心外なのはこっちだよ。ったく、正直に答えやがって……」



「で、どうなの? 付き合うの、付き合わないの?」



「開き直りやがった!」



私はふんと鼻を鳴らす。



浪瀬が断らないと知っているから、威張っていられる。




「あー………」




浪瀬は少々悩んでいるそぶりを見せた後、ひとつ頷いた。



私はにこりと笑顔を作る。





ここからが本番だ。





緊張でからからになる喉を、唾を飲み込みやり過ごす。




「じゃあ、私の彼氏の浪瀬君。さっそくお願いがあるんだけど、いいかな?」




「なんだよ、早速ブランドバッグのおねだりか?」




この俺様に付き合ってもらってるだけありがたいと思え、庶民が。


という副音声が聞こえた。




高校生の分際でブランドとか、その発想がなんなのかしら。


浪瀬って、金持ちなの?




一応私も私立に通っている身だけれど、裕福というわけではない。


金持ちは顔もいいんですか、そうですか。


性格は悪いですね、そうですねー。




じゃなくて。




「もっと簡単なことですよ」





私は首を振って否定する。



そして真っ直ぐ浪瀬を見つめた。





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