トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐
「時間だー。できてるか?」



計ったように席を外していた担任が戻り、名前で埋まった黒板を見る。



「よし、これで決まりだな」



担任が決定版の黒板を写真に収め、教室を後にする。




あらあら。

これはいくら浪瀬君といえど、ブーイングの嵐ではないですか。

勝手に決められた男子からなんと言われるやら。




「お、これ、俺のやりたかったやつ」

「浪瀬君、ありがとう。迷惑かけずに済みそうだよ」




………意外と、好意的に受け取られていた。



もう一度、浪瀬が男子を振り分けた競技を確認すると、なるほど。

浪瀬あいつ、よく見てるな。



走るのが速い人はリレーに、苦手な人は綱引きなどの動かない競技に。

上手いように振り分けている。



「待てよ浪瀬。なんで俺らが綱引きなんだ!」

「そうだそうだ!」




文句を言うのは、二人三脚の座を争っていた川邊。

隣では市場もうなづいている。



「お前ら、ガタイが良いから適任だろ。期待してるぜ」



男子からは満場一致の拍手。




「絶対勝ってきてね」

「応援してる」

「よっ、体育祭の主役!」

「期待の星!」




などなど。

ノリに任せて彼らをおだてる。

歓声のなかに小さくだが、松本さんの声もあり、悪い気のしなかったらしい彼ら。




「ちっ、今回は休戦だ」

「そうだな」

「やるぞ!」

「おうよ!」



二人はかたい握手を交わし、男同士の友情が芽生えたように思えた。

< 187 / 252 >

この作品をシェア

pagetop