勇者34歳
「ナタ姫様、何も話しておられないのですか。」

衛兵がナターシャさんにたずねる。

「今はただの治癒士だからのぅ。」

話すも何もデットレイトで
肉屋をやってたと聞いたんだが。

「世が荒れていなければナタ姫様は王女なんですよ!?」





えっ…




「「「えーっ?!」」」





どういうことなんだ!?

確かに育ちが良さそうではあるんだけど。

「何を言われているのかよくわからない。」

としか、言いようがなく。

「俺は、ナターシャは貴族としか聞いてないんだが。」

イルルも知らないらしい。

「困ったのぅ。」

ナターシャさんは
あまり困ってないような顔なんだが。

「アヌーク、お姫様なんてね、今の時代にはいらないのよ?」

「ナタ姫様…。」

「国民こそが国の至宝。だから国民の安全が守られればそれでいいのだよ。」

ナターシャさんは、まさか。

「…旧プラーティーン王国のお姫様?」

ナターシャさんが渋い顔をする。
長い沈黙の後、ナターシャさんが口を開いた。

「現プラティナム自治区侯爵の妹じゃの。」

「それ、言い方を変えただけで同一人物じゃね?」

リーヴェにつっこまれる。

「アヌークはおしゃべりさんだのぅ。」

ナターシャさんは
小声で困ったのぅ、を連発している。

表情には出ないものの
多少は焦っているようだ。
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