♡祐雫の初恋♡

「得体のしれぬなどということはありません。

 彼女は、桜河電機のご息女です」


 慶志朗は、祐雫のことを得体のしれぬと誤解されたことに憤りを感じる。


「桜河電機……

 まぁ、お嬢さまは、確か未だ高校生で、

 変わり者と噂されてございましょう」


 母は、思いも寄らなかった祐雫の名に驚きを隠せなかった。


「海外でも成功を収めている桜河電機か。

 今まで我が社とは、関わりはなかったが、

 神がかり的に業績を伸ばしているし、

 強運を呼び込む力があることは確かだ」


 父は、桜河光祐の陽光のような輝きを思い浮かべて、

 しばし損得を考えていた。
 

「彼女は、婚約破棄とは関係ありません。

 それに変わり者などとは、噂に過ぎません。


 私は、しばらくこの眼で世界を見て、

 納得して結婚相手を決めたいだけです。


 ですから、麗華さんと琳子さんとの婚約は白紙に戻したいのです。

 その上で、再び出会うことがあれば、

 将来お付き合いさせていただくことになるやもしれません」


 慶志朗は、父母の意見に従う気がなく、

 今回ばかりは、自身の意思を通す覚悟を決めていた。



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