♡祐雫の初恋♡

「慶志朗、頭をおあげになって。

 父上さまが勝手にお決めになられた婚約ですもの、

 わたくしたちが納得して、解消いたしましょう。


 祐雫さんとおっしゃったかしら。

 彼女が現れてから、慶志朗は、変ったわ。

 世間並の甘い恋がしたくなったのかしら。


 何はともあれ、ありがとう、慶志朗。

 今までとても楽しい時間でしたわ」


 麗華の視界は、真っ白になり、

 慶志朗の神妙な顔だけが視界を占めていた。


 今まで、気ままに、慶志朗と交際してきたつもりだった。


 麗華は、結婚は、計略的なものだと思っていたので、

 家柄も学歴も容姿も申し分のない慶志朗が、

 当然自分に相応しい許婚だと考えていた。


「麗華さん、お邸まで送って行きます。

 そして、ご両親にお詫びを申し上げます」


 今宵の慶志朗は、飄々(ひょうひょう)としたいつもらしさがなく、

 麗華に平謝りする。




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